論文や書籍では、参照した文献を本文中で「引用」し、巻末に「参考文献リスト」としてまとめます。LaTeX はこの作業を二段構えで支えます。本文に置く \cite がリストの該当項目を指し示し、リストの側は番号や著者名を自動でそろえます。このページでは、引用命令 \cite・\nocite と、手書きの参考文献環境 thebibliography を軸に、引用の基本を見ていきます。
本文で引用する — \cite と \nocite
引用の中心は \cite{key} です。key は文献に付けた 引用キー(自分で決める短い名前)で、本文中に 引用マーク(標準クラスでは [1] のような番号)を出力し、同時にその文献を参考文献リストへ載せます。複数まとめて \cite{knuth,lamport} のようにカンマ区切りで書けます。
省略可能な引数を付けると、ページなどの注記を添えられます。\cite[p.~5]{knuth} は [1, p. 5] のように出力します(~ は途中で行が折れないよう連結する空白)。注記は引用マークの中に併記されます。
クヌースは \TeX{} の設計思想を詳述している~\cite{knuth}。
とくに行分割の議論は重要である~\cite[p.~94]{knuth}。
複数の文献をまとめて挙げることもできる~\cite{knuth,lamport}。本文では引用しないが、リストには載せたい文献には \nocite{key} を使います。引用マークは出力されず、リストへの登録だけが行われます。特別な書き方として \nocite{*} は、.bib ファイル中の すべての項目 をリストに含めます(文献データベースの全件を一覧したいときに便利です)。
手書きの参考文献リスト — thebibliography
リストそのものを LaTeX に組ませる最も基本的な方法が thebibliography 環境です。中に並べる \bibitem{key} ... が 1 件の文献 を表し、key がその項目の引用キー、続く本文がリストに表示される文献情報です。\cite{key} は、ここで定義した同じ key を持つ \bibitem と照合され、その項目の番号を引用マークとして取り出します。
\begin{thebibliography}{99}
\bibitem{knuth}
Donald E. Knuth, \emph{The \TeX book}, Addison-Wesley, 1986.
\bibitem{lamport}
Leslie Lamport, \emph{\LaTeX: A Document Preparation System},
2nd ed., Addison-Wesley, 1994.
\end{thebibliography}\begin{thebibliography}{99} の {99} は 最も幅の広いラベル を表す引数です。番号の桁数に合わせてラベル欄の幅が決まるため、項目が 10 件以上なら {99}(2 桁)、9 件以下なら {9} を渡すのが目安です。これを誤ると、番号がきれいにそろわず字下げがばらつきます。
番号ではなく独自のラベルを使いたいときは、\bibitem の省略可能な引数を使います。\bibitem[KL94]{lamport} のように書くと、自動の番号の代わりに [KL94] がラベルとして使われ、\cite{lamport} もそのラベルを出力します。
なお番号や相互参照と同様、引用は 2 回コンパイル して確定します。1 回目で各 \bibitem の番号が .aux ファイルに書き出され、2 回目でそれを読んで \cite の箇所に正しい番号が入ります。1 回目だけだと引用マークが [?] のままになります。
番号式と著者‑年式
引用の体裁には大きく二系統あります。[1] のように番号で示す 番号式(numeric) と、(Knuth, 1986) のように著者名と発行年で示す 著者‑年式(author–year) です。標準の \cite は番号式が基本ですが、分野によっては著者‑年式が求められます。
こうした体裁の切り替えや、より細かい引用命令はパッケージが提供します。代表が natbib と biblatex で、丸括弧の引用 \citep{key}(→ (Knuth, 1986))と、著者名を文の主語として地の文に溶け込ませる \citet{key}(→ Knuth (1986))を区別できます。著者名だけの \citeauthor{key}、発行年だけの \citeyear{key} もあります。natbib は番号式・著者‑年式の両方に対応します。詳しくは各パッケージのページを参照してください。
| 命令 | 系統 | 出力の例 |
|---|---|---|
\cite | 標準(番号式) | [1]、注記付きは [1, p. 5] |
\citep | natbib / biblatex(丸括弧) | (Knuth, 1986) |
\citet | natbib / biblatex(地の文) | Knuth (1986) |
\citeauthor | natbib / biblatex(著者のみ) | Knuth |
\citeyear | natbib / biblatex(年のみ) | 1986 |
番号式を整える — cite パッケージ
番号式のまま体裁だけ整えたいなら、Donald Arseneau の cite パッケージが手軽です。\usepackage{cite} と読み込むだけで、標準の \cite の挙動が改善されます。複数引用の番号を 昇順に並べ替え、連続する番号を 範囲に圧縮 します。たとえば \cite{c,a,b,d} が [2,3,4,6] を指すなら、出力は自動的に [2–4,6] になります。
番号を上付きで出したい場合は \usepackage[superscript]{cite}(super も同義)とします。並べ替えを止める nosort、範囲圧縮を止める nocompress、番号間の空白を詰める nospace、改行を抑える nobreak などのオプションもあります。\cite の注記引数(\cite[p.~5]{knuth})はそのまま使えます。
実際のプロジェクトでは BibTeX/biber を
thebibliography を手書きするのは、項目が少ないときや体裁を完全に自分で決めたいときには有効です。しかし実務では、文献情報を .bib ファイルに 整形前のデータ として蓄え、BibTeX や biber にリストを生成させるのが普通です。番号付け・並べ替え・体裁を投稿規定に合わせて自動化でき、同じ .bib を複数の原稿で使い回せます。\cite の使い方自体は変わりません。詳しくは BibTeX のページで扱います。