本文の流れを止めずに補足を添える二つの道具が、脚注と傍注です。脚注はページの下に番号付きで送る注、傍注は本文の脇(余白)に置く短い注。このページでは \footnote とその分割版 \footnotemark/\footnotetext、footmisc パッケージによる調整、そして \marginpar と marginnote パッケージの傍注を、それぞれの使いどころと落とし穴とともに見ていきます。
脚注 — \footnote
脚注の基本は **\footnote{本文}** です。これを書いた位置に上付きの番号(脚注マーク)が自動で付き、対応する本文がそのページの一番下に組まれます。番号は footnote カウンタで自動的に増えるので、自分で振る必要はありません。
大切なのは 置く位置 です。脚注マークは注を付けたい語の直後に出したいので、\footnote は その語のすぐ後ろに、間に空白を入れずに 書きます。語と命令の間に空白や改行があると、その空きが本文に残ってマークが語から離れてしまいます。句読点との関係では、ふつう句読点の 後ろ に置きます。
TeX は 1978 年に生まれました\footnote{作者はクヌース。}。
その数式組版は今も標準です\footnote{arXiv も LaTeX を推奨。}。番号を強制したいときは **\footnote[番号]{本文}** と書きます。角かっこで番号を与えると、その回は footnote カウンタを増やさず、指定した番号でマークを出します。同じ脚注を二か所から参照したいときなどに使います。
番号の 見た目 は \thefootnote で決まります。アラビア数字をやめて記号(†, ‡ など)にしたいときは、\renewcommand{\thefootnote}{\fnsymbol{footnote}} とします。\fnsymbol は 1〜9 をアスタリスク・短剣符などの記号に割り当てるので、注が少ない文書に向きます。\alph・\roman などに変えることもできます。
マークと本文を分ける — \footnotemark / \footnotetext
\footnote は 「外側の段落モード」 でしか正しく働きません。そのため、**表(tabular)の中・\caption の中・節見出し(\section など)の引数・minipage の中** といった場所では、マークが出なかったり本文が消えたりします。こうした場所のための逃げ道が、マークと本文を別々に置く二つの命令です。
\footnotemark** — マーク(番号)だけを、その場に出す。引数なしならfootnoteカウンタを 1 進める。\footnotemark[番号]と番号を与えると カウンタを進めず その番号を使う。\footnotetext{本文}** — 脚注の本文だけをページ下に出す。\footnotemarkの後の、外側の段落モードの場所に書く。\footnotetext[番号]{本文}で番号を合わせられる。
典型的な使い方はこうです。表の中では \footnotemark でマークだけを出し、表(や minipage)を抜けた本文側で \footnotetext{…} に本文を書きます。番号がずれないよう、明示的に \footnotemark[7] と \footnotetext[7]{…} のように揃えるのが安全です。
\begin{tabular}{ll}
項目 A & 値\footnotemark[1] \\
項目 B & 値 \\
\end{tabular}
\footnotetext[1]{この値は暫定です。}minipage の中の脚注は特別** です。minipage 内で \footnote を使うと、ページ下ではなく **その minipage の下** に組まれ、番号も footnote ではなく mpfootnote カウンタで管理され、既定では 小文字のアルファベット(a, b, c…)になります。つまり本文の脚注番号とは独立し、minipage の中だけで完結します。
footmisc で脚注を調整する
標準の脚注の挙動を細かく変えたいときは、定番の **footmisc** パッケージを読み込みます。\usepackage[オプション]{footmisc} とプリアンブルで指定し、オプションを組み合わせて挙動を選びます。代表的なものを挙げます。
| オプション | 効果 |
|---|---|
perpage | 脚注番号をページごとにリセットする(各ページで 1 から振り直す)。 |
bottom | 脚注を必ずページの最下部に押し下げる(本文が短いページでも下に固定)。 |
para | 複数の脚注を改行で区切らず、一つの段落として続けて組む。 |
multiple | 隣り合う複数のマークを、区切り記号を挟んできれいに並べる。 |
symbol | 番号の代わりに記号(*, †, ‡…)で脚注をラベル付けする。 |
余白の幅にも手が届きます。マークと脚注本文の間隔(脚注の左マージン)は、footmisc が用意する **\footnotemargin** という長さで調整できます。たとえば \setlength{\footnotemargin}{1.8em} のように設定します。
\usepackage[perpage,bottom,multiple]{footmisc}
% ページごとに番号リセット+最下部固定+隣接マーク処理傍注 — \marginpar
本文の脇に短い注を置きたいときは **\marginpar{本文}** を使います。書いた位置の高さに合わせて、余白に小さな注が組まれます。両面組(twoside)では注は 外側の余白 に置かれ、左ページと右ページで自動的に左右が入れ替わります。
左右で文言を変えたいときは **\marginpar[左用]{右用} と書きます。角かっこの [左用] が左の余白に出るとき(=左ページ)のテキスト、波かっこの {右用}** が右の余白に出るときのテキストです。注を出す側を反転させたいときは \reversemarginpar、既定に戻すには \normalmarginpar を使います。
ただし \marginpar には強い 制約 があります。これは内部的に図表と同じ「フロート」の一種として処理されるため、**フロート(figure/table)の中・脚注の中・別の \marginpar の中では使えません**。また 1 つの段落しか入れられず、近い行に複数置くと位置が思うように揃わない(重なる・ずれる)こともあります。
marginnote パッケージ — 制約のない傍注
そうした制約を避けたいときは **marginnote パッケージの \marginnote{本文}** を使います。これはフロートを使わない仕組みなので、\marginpar が使えない フロートや脚注の中でも 傍注を置けます。\marginpar 同様に \marginnote[左用]{右用} と左右別の文言を与えられ、\reversemarginpar も尊重されます。
さらに \marginnote には 縦位置のオフセット を与える二つ目の任意引数があり、波かっこの 後ろ に書きます。書式は \marginnote[左用]{右用}[ずれ] で、[ずれ] には長さを与えます。負の値で上へ、正の値で下へ 注を動かせるので、隣接する傍注の重なりを手で散らすのに便利です。
\usepackage{marginnote}
...
本文の脇に注を付けます\marginnote{これは傍注。}。
少し上げたい場合\marginnote{上にずらす}[-1\baselineskip]。なお \marginnote は注を 現在の行の高さ にそのまま置くため、\marginpar のような自動の衝突回避はしません。重なるときは前述のオフセットで調整します。脚注のフロート的な制約から自由な反面、ページまたぎはできないなどの違いがある点も覚えておくとよいでしょう。