区切り記号(括弧類)

区切り記号(delimiter)とは、数式を囲む丸括弧 ( )、角括弧 [ ]、波括弧 \{ \} のような 括弧類の文字 のことです。このページは、それぞれの文字を どう入力するか を引くための一覧です。括弧を中身の高さに合わせて伸ばす \left\right や、四段階から大きさを選ぶ \big … といった サイズ調整 は別ページ(数式の「括弧類(\left \right)」)にまとめてあるので、ここでは深入りせず、文字そのものを丸括弧・縦線・床と天井・矢印・特殊な括弧の順に整理します。

区切り記号とサイズ調整は別物

まず大切な区別をひとつ。「どの括弧を出すか(文字の種類)」と「その括弧をどれだけ大きくするか(サイズ)」は、LaTeX では別々に決めます。このページが扱うのは前者、つまり (\langle\lfloor のような 区切り記号そのものの入力 です。後者のサイズ調整——\left( … \right) で中身に合わせて自動で伸ばす、\bigl(\Bigl( で段階的に大きくする——は数式側の専用ページに譲ります。

区切り記号はほぼすべて 数式モードのなか で使う記号です。下の表に挙げる命令は、特記しない限り LaTeX 標準 でそのまま使え、追加パッケージは要りません(絶対値・ノルムの一部の命令だけ amsmath が必要で、そこには印を付けます)。そして表中の **どの文字も \left\right の直後に置いて自動伸縮させられます**。たとえば \left\langle … \right\rangle\left\lfloor … \right\rfloor のように使います(伸縮の詳細は関連ページへ)。

latex
% 文字の種類はこのページ、サイズ調整は別ページ
\[
  ( a + b )
  \qquad
  \left( \frac{a}{b} \right)
  \qquad
  \left\langle \frac{x}{2} \right\rangle
\]

丸括弧・角括弧・波括弧・山括弧

もっとも基本的な四種類です。丸括弧 ( ) と角括弧 [ ]キーボードからそのまま 打てます。注意がいるのは波括弧で、{} は LaTeX では 引数のグループ化に使う予約文字 なので、そのまま打っても括弧としては出力されません。波括弧の文字を出すには、バックスラッシュを付けて **\{\}** と書きます。山括弧は不等号 < > とは別物で、内積やブラ・ケット記法に使う \langle(⟨)・\rangle(⟩)を用います。

入力字形用途・備考
((丸括弧(開き)。キーから直接
))丸括弧(閉じ)。キーから直接
[[角括弧(開き)。\lbrack も同義
]]角括弧(閉じ)。\rbrack も同義
\{{波括弧(開き)。{ は予約文字なので \{ と書く。\lbrace も同義
\}}波括弧(閉じ)。\} と書く。\rbrace も同義
\langle山括弧(開き)。内積・ブラケットに。< とは別物
\rangle山括弧(閉じ)。> とは別物

なお \lbrack\rbrack\lbrace\rbrace は、それぞれ [ ] \{ \} と同じものを出す別名です。マクロの引数内など、生の [{ を書くと解釈が紛らわしい場面で名前付きの命令が好まれることがあります。

縦線(絶対値・ノルム)

縦線は、絶対値の単線と、ノルムの二重線の二つがあります。単線は |\vert も同義)、二重線は \|\Vert も同義)です。ただし |x| のように 同じ文字で開きと閉じの両方 を書くと、LaTeX はその | が開き括弧か閉じ括弧かを判断できず、前後の間隔が乱れることがあります。

そこで amsmath パッケージは、開き・閉じを区別した意味的に正しい命令 を用意しています。絶対値には開き \lvert と閉じ \rvert、ノルムには開き \lVert と閉じ \rVert。これらを使うと開き括弧・閉じ括弧として正しい間隔で組まれます。さらに毎回手書きせずに済むよう、mathtools\DeclarePairedDelimiter\abs{…}\norm{…} のような専用命令を定義する方法もあります(詳細は関連ページへ)。

document.tex
\usepackage{amsmath}   % \lvert \rvert \lVert \rVert に必要
% ...
\[
  |x| \;=\; \lvert x \rvert,
  \qquad
  \lVert v \rVert \;=\; \sqrt{\langle v, v \rangle}
\]
入力字形用途・備考
|単縦線。絶対値など。\vert も同義
\vert単縦線(| と同じ)
\|二重縦線。ノルムなど。\Vert も同義
\Vert二重縦線(\| と同じ)
\lvert絶対値の開き。amsmath が必要
\rvert絶対値の閉じ。amsmath が必要
\lVertノルムの開き。amsmath が必要
\rVertノルムの閉じ。amsmath が必要

床関数・天井関数の括弧

床(floor、切り捨て)と天井(ceiling、切り上げ)の括弧です。床関数 ⌊x⌋ は開き \lfloor(⌊)と閉じ \rfloor(⌋)、天井関数 ⌈x⌉ は開き \lceil(⌈)と閉じ \rceil(⌉)で書きます。いずれも LaTeX 標準で、命令名の lr が左(開き)・右(閉じ)を表します。下端だけ/上端だけ角があるのが床と天井の見分け方です。

latex
\[
  \lfloor x \rfloor \le x \le \lceil x \rceil,
  \qquad
  \left\lfloor \frac{n}{2} \right\rfloor
\]
入力字形用途・備考
\lfloor床関数の開き。切り捨て(その数以下で最大の整数)
\rfloor床関数の閉じ
\lceil天井関数の開き。切り上げ(その数以上で最小の整数)
\rceil天井関数の閉じ

矢印・斜線を括弧として使う

区切り記号として使えるのは括弧だけではありません。縦向きの矢印 は伸縮する区切りとして使え、単線の \uparrow(↑)・\downarrow(↓)・両向きの \updownarrow(↕)、二重線の \Uparrow(⇑)・\Downarrow(⇓)・\Updownarrow(⇕)があります。可換図式の縦の射や、行列の脇に範囲を示すときなどに、\left\right と組み合わせて中身の高さまで伸ばして使います。

また斜線も括弧として使えます。順斜線 / はキーから直接、逆斜線 \backslash(\)は商集合 G\backslash H などに用います。\backslash と書くのは、\ 単独だと改行命令になってしまうためです。これらを \left\right の対の片側に置けば、対角に伸びる区切りが得られます。

入力字形用途・備考
\uparrow上向き矢印(単線)
\downarrow下向き矢印(単線)
\updownarrow上下両向き矢印(単線)
\Uparrow上向き矢印(二重線)
\Downarrow下向き矢印(二重線)
\Updownarrow上下両向き矢印(二重線)
//順斜線。キーから直接
\backslash\逆斜線。商集合など。\ 単独は改行命令

特殊な括弧と「見えない括弧」

最後に、使用頻度は低いものの覚えておくと役立つ区切り記号です。\lgroup(⟮)・\rgroup(⟯)は 角を鋭くした太めの丸括弧 のような形で、大きく組む表示で映えます。\lmoustache(⎰)・\rmoustache(⎱)は 大きな波括弧の上半分・下半分 にあたる形で、特殊な伸縮区切りとして使います。いずれも波括弧の部品から作られた、LaTeX 標準の伸縮専用デリミタです。

そしてもう一つ、**ピリオド . は「何も描かない括弧」= ヌル・デリミタ** です。\left\right は必ず対で書く決まりですが、片側だけ括弧を出したくないとき、出さない側に . を置きます。たとえば微分の評価 \left. \frac{dy}{dx} \right|_{x=0} では、左の \left. は何も描かず、右の \right| だけが縦線として伸びます。. 自体は表示されないので、これは区切り記号というより「対の規則を満たすための空の指定」です。

latex
\[
  \left\lgroup \frac{a}{b} \right\rgroup
  \qquad
  \left. \frac{dy}{dx} \right|_{x=0}
\]
入力字形用途・備考
\lgroup角の鋭い太めの丸括弧(開き)。大きな表示向き
\rgroup同(閉じ)
\lmoustache大波括弧の上半分。特殊な伸縮区切り
\rmoustache大波括弧の下半分
.(なし)ヌル・デリミタ。\left\right の片側を空にする

ここまでに挙げた区切り記号は、いずれも \left\right の直後に置けば中身の高さに合わせて自動で伸び、\bigl\Bigl … なら手で段階的に大きさを選べます。その使い分けと、内側に伸びる仕切り \middle、絶対値・ノルムを一括定義する \DeclarePairedDelimiter については、数式の「括弧類(\left \right)」のページを参照してください。