自分の PC に TeX 環境を入れる手順を、Windows・macOS・Linux/Unix の順に具体的に追います。どのディストリビューションを選ぶかは別ページに譲り、ここでは「実際にインストーラを起動し、PATH を通し、入った版を確かめる」までを扱います。現在の最新版は TeX Live 2026(2026 年 3 月 1 日公開)と、その macOS 版 MacTeX-2026 です。
始める前に
インストールは大きく二択です。フルインストール(既定の scheme-full)は 7GB ほどあり、CTAN のすべてのパッケージとフォントを含みます。容量と回線に余裕があるなら、後でパッケージを探す手間が省けるこちらが結局は楽です。一方 最小構成(BasicTeX や scheme-basic)は数百 MB で済みますが、足りないパッケージは後から tlmgr で足すことになります。回線が細い場合、フル導入のダウンロード/展開には 1 時間以上かかることもあります。
どの版・どの配布物(TeX Live / MiKTeX / MacTeX)が何であり、互いにどう違うかは「ディストリビューション」のページで比べています。導入後のパッケージ追加(tlmgr)や TEXMF ツリーの構造は、それぞれ専用ページがあります。本ページはあくまで 導入作業そのもの に集中します。
Windows へのインストール
Windows には選択肢が二つあります。TeX Live はクロスプラットフォームの定番で、毎年の版が他 OS と揃います。MiKTeX は Windows 生まれで、使った命令に応じて足りないパッケージをその場で自動取得する仕組みが特徴です。どちらでも構いませんが、ここでは両方の手順を示します。
TeX Live の場合。 tug.org から **install-tl-windows.exe**(約 20MB。同内容の install-tl.zip でも可)を入手し、実行します。これはネットインストーラで、起動後に CTAN ミラーから本体一式をダウンロードしながら導入します。既定のインストール先は C:\texlive\2026 で、スキーム(導入規模)やインストール先は GUI で選べます。Windows では インストーラが PATH を自動で設定する ため、終わったら新しいコマンドプロンプトを開くだけで使えます(既に別の TeX が PATH にあれば先頭へ、なければ末尾へ追加されます)。
REM Verify the install in a new Command Prompt (cmd.exe)
tex --version
where pdflatex
where tlmgrMiKTeX の場合。 miktex.org の Download から Basic MiKTeX インストーラ(.exe)を入手して実行します。インストール範囲は 個人用(per-user)が推奨 で、管理者権限なしに入れられます。途中、不足パッケージを自動導入するかを 「Ask me first(毎回確認)/ Always(常に)/ Never(しない)」 から選びます。終わったら MiKTeX Console を起動し、まず Updates を確認しておくのが定石です。多数の PC へ無人導入したいときは、miktexsetup を使ったコマンドライン(サイレント)インストールも用意されています。
macOS へのインストール
macOS の標準は MacTeX です。これは TeX Live 一式に、TeXShop・BibDesk・LaTeXiT・TeX Live Utility といった GUI アプリと Ghostscript を加えてまとめた、Mac 向けの配布物です。tug.org から **MacTeX.pkg**(約 6.4GB)をダウンロードし、ダブルクリックして案内に従うだけ。本体は /usr/local/texlive/2026 に入ります。MacTeX-2026 の対応は macOS 11(Big Sur, 2020)以降で、Intel・Apple Silicon の両方に対応します(Catalina 以前は非対応)。
PATH について Mac は気が利いています。MacTeX はバイナリ本体(例:/usr/local/texlive/2026/bin/universal-darwin)を直接 PATH に入れる代わりに、**/Library/TeX/texbin という symlink(シンボリックリンク)** を有効な配布物のバイナリへ向けます。さらに /etc/paths.d に置かれた設定が、この /Library/TeX/texbin を既定の PATH に加えます。だから 新しいターミナルを開けばそのまま使え、複数版を切り替えても PATH が自動で追従します。すぐ使いたいなら、開いているシェルで次を実行します。
# Refresh PATH in the current shell, then verify
eval "$(/usr/libexec/path_helper)"
tex --version
which pdflatex # -> /Library/TeX/texbin/pdflatexGUI アプリは要らず CLI だけで十分なら、Homebrew が手早い選択肢です。mactex は GUI アプリ込み、mactex-no-gui は同じ TeX Live 一式から GUI を除いたもの、basictex はさらに小さい最小構成(GUI も Ghostscript も含まず、/usr/local/texlive/2026basic に入る)です。
# Full TeX Live without the GUI apps (most common via Homebrew)
brew install --cask mactex-no-gui
# Or the full bundle with GUI apps
# brew install --cask mactex
# Or a small starter install
# brew install --cask basictexLinux / Unix へのインストール
Linux/Unix では二つの道があり、選び方で後々の快適さが変わります。一つは **tug.org の公式インストーラ install-tl、もう一つは ディストリのパッケージ**(Debian/Ubuntu の texlive-full、Fedora の texlive-scheme-full など)です。
まず 公式インストーラ。最新版がその日のうちに手に入り、tlmgr で個別パッケージを随時更新できるのが利点です。install-tl-unx.tar.gz を取得して展開し、付属の Perl スクリプトを実行します。既定の導入先は /usr/local/texlive/2026 です。
# Download, unpack, and run the official net installer
cd /tmp
curl -LO https://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet/install-tl-unx.tar.gz
zcat < install-tl-unx.tar.gz | tar xf -
cd install-tl-*
# Interactive text installer (use sudo if installing under /usr/local)
sudo perl ./install-tl
# ...or a non-interactive default install:
# sudo perl ./install-tl --no-interactionUnix では PATH は自分で通します(Windows と違い自動設定されません)。バイナリのディレクトリは CPU により名前が変わり、64bit Intel/AMD なら /usr/local/texlive/2026/bin/x86_64-linux です。シェルの起動ファイルに追記します。
# Add to ~/.profile or ~/.bashrc (adjust the platform folder for your CPU)
export PATH="/usr/local/texlive/2026/bin/x86_64-linux:$PATH"
# Then reload and verify
source ~/.profile
tex --version一方 ディストリのパッケージ(sudo apt install texlive-full など)は、システムに溶け込み依存解決も自動で楽です。ただし注意が二点。第一に 巨大で、texlive-full は数 GB に及びます。第二に、更新の時期と内容は OS 提供元任せ なので、公式の年次版から数か月〜年単位で遅れることがあります。最新パッケージや個別の tlmgr 更新が要るなら公式インストーラが向きます。なお両者は独立したツリーとして共存でき、PATH の先頭をどちらにするかで使う方を切り替えられます。
インストールの確認と PATH の点検
どの OS でも、導入後はまず 新しい端末を開いて 動作を確かめます。tex --version がバージョン(例:TeX Live 2026)を表示すれば、本体が見つかっています。次に、実際に呼ばれる実行ファイルの場所を確かめます。
# macOS / Linux
which pdflatex # prints the path that will run, e.g. /Library/TeX/texbin/pdflatex
# Windows (cmd.exe)
where pdflatex # prints C:\texlive\2026\bin\windows\pdflatex.exewhich/where が 何も返さない、あるいは想定と違う場所を指すなら、PATH の問題です。表示されるパスが古い版や別の配布物を指していないかを見ます。複数の TeX が入っているとき、実際に使われるのは PATH の先頭にある方 です。意図した版が選ばれるよう、起動ファイルでそのバイナリディレクトリを PATH の先頭に置いてください。設定を変えたら、必ず端末を開き直すか起動ファイルを再読込します。
最後に、本当に組版できるかを一度試します。小さな .tex を作ってコンパイルし、PDF が出れば導入は完了です。
printf '\\documentclass{article}\\begin{document}Hello, \\LaTeX!\\end{document}' > hello.tex
pdflatex hello.tex
# -> produces hello.pdf