集合論と論理で使う記号——∀・∃ といった量化記号、∧・∨・¬ の論理結合子、∈・⊂・∪ などの集合記号、そして証明で使う ⊢・⊨ や ∴・∵——は、いずれも数式モードのなかで \forall・\in・\cup のような命令として入力します。勘どころは三つ。多くは LaTeX 標準で使えること、\land/\lor は \wedge/\vee の別名だということ、そして \nexists・\complement・\therefore など一部は amssymb パッケージが要ること。このページは入力の考え方を整理したうえで、量化・論理/集合/証明(ターンスタイル)/推論記号に分けて引きやすい一覧表にまとめ、\varnothing と \emptyset のような紛らわしい選択にも触れます。
記号の入れ方とパッケージ
これらの記号は 数式モードのなか で使います。本文(テキストモード)にそのまま \forall と書いてもエラーになるので、$\forall x$ のように数式モードに入れてから書きます。命令名は意味の英語綴りに対応し、\forall(すべての)、\exists(存在する)、\in(元)、\subset(部分集合)、\cup(和集合)のようになります。
\[
\forall \varepsilon > 0 \;\exists \delta > 0 \;
\bigl( |x - a| < \delta \implies |f(x) - f(a)| < \varepsilon \bigr)
\]
\[
A \cup B = \{\, x : x \in A \lor x \in B \,\}, \qquad
A \subseteq B \iff (\forall x)\,(x \in A \Rightarrow x \in B)
\]ここで \forall・\exists・\in・\cup・\subseteq・\Rightarrow は LaTeX 標準 で、追加パッケージは要りません。一方 \implies・\iff は amsmath、後出の \nexists・\varnothing・\complement・\therefore・\because は amssymb が必要です。実用上は、プリアンブルに amsmath と amssymb をまとめて読み込んでおけば、このページの記号はすべて使えます。
\usepackage{amsmath} % \implies, \iff(間隔つきの長い矢印)
\usepackage{amssymb} % \nexists, \varnothing, \complement, \therefore, \because本ページの表では、amssymb が必要なものに「(ams)」と明記します。注記のない命令は LaTeX 標準だと考えてください。なお記号には 種別 があり、\in や \subset は関係子(前後がやや広い)、\cup・\cap・\land・\lor は 2 項演算子(左右対称の間隔)、\forall・\neg・\top などは通常記号として組まれます。この違いが自動で付く間隔に効いてきます。
量化記号と論理結合子
まず述語論理の骨格をなす記号です。全称 ∀(\forall)と存在 ∃(\exists)、その否定として「存在しない」∄(\nexists、ams)。論理結合子は、否定 ¬、連言 ∧、選言 ∨、含意 ⇒、同値 ⇔ の五つが基本です。含意と同値には二系統の出し方があり、\Rightarrow/\Leftrightarrow は短い二重線矢印、\implies/\iff(amsmath)はその前後に広めの間隔を入れた長い矢印で、地の文に近い推論の流れを書くときに読みやすくなります。
| 命令 | 字形 | 読み・用法 |
|---|---|---|
\forall | ∀ | 全称量化子(すべての) |
\exists | ∃ | 存在量化子(存在する) |
\nexists | ∄ | 存在しない(amssymb が必要) |
\neg | ¬ | 否定。\lnot と同義 |
\lnot | ¬ | 否定。\neg と同義 |
\land | ∧ | 連言(かつ)。\wedge の別名 |
\wedge | ∧ | 連言(かつ)。\land と同字形 |
\lor | ∨ | 選言(または)。\vee の別名 |
\vee | ∨ | 選言(または)。\lor と同字形 |
\Rightarrow | ⇒ | 含意(ならば)。短い二重線矢印 |
\implies | ⟹ | 含意。間隔つきの長い矢印(amsmath) |
\Leftrightarrow | ⇔ | 同値(必要十分)。短い二重線矢印 |
\iff | ⟺ | 同値。間隔つきの長い矢印(amsmath) |
注意点をいくつか。**\neg と \lnot は完全に同じ** で、\land/\lor も \wedge/\vee の別名にすぎません(amssymb は不要)。\land・\lor の名前は読み手に意図が伝わりやすく論理式向き、\wedge・\vee は外積や束(lattice)の演算など意味が「論理」でない文脈で好まれます——出力は同一なので好みと文脈で選びます。\implies/\iff は実体としては \Longrightarrow/\Longleftrightarrow の前後に太いスペース(\; 相当)を入れたもので、\iff は LaTeX 標準のものを amsmath が再定義して間隔を改善しています。短い \Rightarrow と長い \implies は文書内で使い分けを一貫させましょう。
集合記号
集合まわりの記号です。空集合は二つの字形があり、標準の \emptyset(∅)と、amssymb が提供する \varnothing(∅)です。後者は斜めの線が貫く整った字形で、\emptyset の縦長な見た目を嫌って **\varnothing を好む人が多い** ので、見出しでもこちらを推奨形として挙げます。所属は ∈(\in)と、その否定 ∉(\notin)、左右を反転した ∋(\ni、「〜を要素にもつ」)。包含は真部分集合 ⊂ と等号つき ⊆、その逆向きの ⊃・⊇。集合演算は和 ∪、積 ∩、差 ∖(\setminus)、補集合 ∁(\complement、ams)です。
| 命令 | 字形 | 読み・用法 |
|---|---|---|
\emptyset | ∅ | 空集合(標準) |
\varnothing | ∅ | 空集合。整った字形で好まれる(amssymb が必要) |
\in | ∈ | 元(〜に属する) |
\notin | ∉ | 〜に属さない |
\ni | ∋ | 〜を要素にもつ(∈ の反転) |
\subset | ⊂ | 部分集合 |
\subseteq | ⊆ | 部分集合または等しい |
\supset | ⊃ | 上位集合(⊂ の逆) |
\supseteq | ⊇ | 上位集合または等しい |
\cup | ∪ | 和集合(合併) |
\cap | ∩ | 積集合(共通部分) |
\setminus | ∖ | 差集合(A ∖ B) |
\complement | ∁ | 補集合。上付きで Aᶜ のように(amssymb が必要) |
使い分けの指針。空集合は **\varnothing(amssymb)を既定にし、文書内で統一** するのがおすすめです。\subset を「真部分集合」と「等号を含む部分集合」のどちらの意味で使うかは分野で割れるため、曖昧さを避けたいときは ⊆(\subseteq)や、真部分集合専用の ⊊(\subsetneq、amssymb)を明示します。差集合は \setminus(∖)で、割り算の / とは別物です。補集合は \complement を上付きにして A^\complement と書くか、\overline{A}(バー)や A^c で表すこともあります。
証明・ターンスタイル記号
論理学・証明論で「導出可能」「充足する」を表す記号です。⊢(\vdash)は構文的な証明可能性(「Γ ⊢ φ:Γ から φ が証明できる」)を表すターンスタイル、⊨(\models)は意味論的な帰結(「Γ ⊨ φ:Γ は φ を含意する/充足する」)を表す二重ターンスタイル。⊣(\dashv)は ⊢ を左右反転した記号で、随伴函手の表記などにも使われます。⊤(\top)は恒真・最大元、⊥(\bot)は恒偽・最小元(束や順序集合の頂・底)を表し、\bot は垂直・直交の記号としても流用されます。
| 命令 | 字形 | 読み・用法 |
|---|---|---|
\vdash | ⊢ | 証明可能(ターンスタイル) |
\dashv | ⊣ | ⊢ の左右反転(随伴など) |
\models | ⊨ | 帰結・充足(二重ターンスタイル) |
\top | ⊤ | 恒真・最大元(順序の頂) |
\bot | ⊥ | 恒偽・最小元。垂直・直交にも |
これらは すべて LaTeX 標準 で、追加パッケージは要りません。\vdash と \models は関係子なので前後に適度な空きが入り、Γ \vdash φ のように両辺を取る形で自然に組まれます。なお ⊤・⊥ は通常記号として扱われるため、二項関係のように使うと間隔が詰まって見えることがあります。
推論を示すマーク(∴・∵)
最後に、論証の流れを示す二つの記号です。∴(\therefore、「ゆえに」)は結論を、∵(\because、「なぜならば」)は理由を導きます。どちらも **amssymb が必要** で、プリアンブルに \usepackage{amssymb} がないと未定義エラーになります。
| 命令 | 字形 | 読み・用法 |
|---|---|---|
\therefore | ∴ | ゆえに(結論を導く)。amssymb が必要 |
\because | ∵ | なぜならば(理由を導く)。amssymb が必要 |
% プリアンブル: \usepackage{amssymb}
\[
x^2 = 4 \quad \therefore\ x = \pm 2,
\qquad x = \pm 2 \quad \because\ x^2 = 4
\]これらは通常記号として組まれるため、前後の空きは自動では十分に入りません。上の例のように \therefore\ と **明示的な空白(\ や \quad)** を補うと読みやすくなります。なお手書きの板書では多用されますが、清書された数学の文章では「ゆえに」「すなわち」といった語で書くほうが好まれることも多く、∴・∵ は使いどころを選ぶ記号です。