その他のエディタ

LaTeX を書くための道具は、専用エディタばかりではありません。古くから Windows で親しまれてきた WinEdt や WinShell のような TeX 向けフロントエンドもあれば、ふだん使いの汎用エディタにプラグインや外部コマンドの設定を足して LaTeX を扱う道もあります。このページでは、それぞれが「組版そのものは行わない」ことを前提に、どんな立ち位置で、どうやって TeX とつながるのかを一望します。

大前提を一つ。ここに挙げるどれも エディタであって、TeX システムではありません。実際に組版するのは別途インストールした TeX Live / MiKTeX / MacTeX などのディストリビューションで、エディタはそれを呼び出して PDF を作らせるだけです。つまり「どのエディタを使うか」と「どの処理系を入れるか」は別の話で、後者は先に済ませておく必要があります。

WinEdt — Windows の老舗フロントエンド

WinEdt(ウィンエディット)は 1993 年から続く Windows 専用の Unicode テキストエディタで、TeX のフロントエンドとして長く定番でした。単体のエディタとしても使えますが、真価は TeX Live や MiKTeX とシームレスに統合する よう作り込まれている点にあります。ツールバーのボタン一つで pdflatexplatex などを走らせ、補完・スペルチェック・プロジェクト管理・正規表現置換まで備えます。

注意したいのはライセンスです。WinEdt は シェアウェアで、31 日間の試用後は継続利用に登録料が必要になります(教育用と商用で料金が分かれます)。無料・オープンソースの選択肢が充実した今となっては有償である点が引っかかるかもしれませんが、開発は活発で、2026 年時点でもバージョン 11 系が Windows 11/10 向けに更新され続けています。

WinShell — 無料の Windows 用 IDE

WinShell は、WinEdt とよく似た立ち位置の 無料の Windows 用 LaTeX 統合環境です。テキストエディタ・構文強調・プロジェクト管理・スペルチェック・表ウィザード・BibTeX 連携・Unicode 対応を一通り備え、ツールバーから処理系を呼び出して組版します。ソースコードは公開されていない(バイナリ配布の)フリーソフトですが、こちらも 2026 年まで更新が続いており、有償の WinEdt に対する手堅い無料の代替として今も使えます。

WinEdt も WinShell も、組版エンジンは含みません。先に MiKTeX か TeX Live を入れ、エディタ側の設定でそのコマンドの場所を教える、という手順は両者に共通です。

汎用エディタで LaTeX を扱う

TeX 専用ではない普段使いのエディタでも、構文強調ビルドの呼び出しさえ用意できれば LaTeX は十分書けます。仕組みは大きく二通り。プラグインが補完・PDF プレビュー・前方/後方検索まで面倒を見てくれる「リッチ」な道と、エディタの外部コマンド機能から latexmk などのビルドを叩くだけの「素朴」な道です。後者は手軽ですが、エラー箇所への移動や PDF との同期は自分で組む必要があります。

JetBrains の IDE(IntelliJ IDEA など) は、TeXiFy IDEA プラグインを入れると本格的な LaTeX 環境になります。構文強調、ラベル・コマンド・環境・ファイル名の補完、組み込みの PDF ビューア、BibTeX(.bib)対応まで揃い、IntelliJ の操作性をそのまま LaTeX に持ち込めます。プログラミングで JetBrains を常用している人には自然な選択肢です(IntelliJ IDEA には無料の Community 版があります)。

Notepad++ は Windows で広く使われる軽量エディタです。土台の Scintilla ライブラリのおかげで TeX ファイルの構文強調は効きますが、標準では数式環境までは色分けされません(ユーザー定義言語で補えます)。ビルドは NppExec プラグインで実現するのが定番で、F6 などに割り当てたコマンドから処理系を走らせ、結果をコンソールに表示し、エラー行を色付けする設定もできます。

日本では、国産・日本語に強いエディタを母艦にする流儀も根強くあります。EmEditor は巨大ファイルも軽快に扱う Windows 用エディタで、当初から TeX (LaTeX) 用の色分け設定が用意されています(フリー版と有償の Professional 版があります)。サクラエディタ は無料で人気の国産エディタで、マクロ機能の ExecCommand などから platex を呼び、続けて DVI ビューアを開く、といったビルドの自動化が古くから共有されてきました。いずれも「日本語の原稿を書き慣れたエディタで打ち、ビルドだけ外部に投げる」という使い方に向きます。

歴史的な存在として Atom も挙げておきます。GitHub 製のエディタで LaTeX 用パッケージもありましたが、2022 年 12 月 15 日に開発が終了(アーカイブ化) されました。技術的には後継の Electron や VS Code に道を譲った形です。これから始めるなら Atom ではなく、後継格の VS Code を選んでください。

一覧で見る

各エディタの素性と、LaTeX をどう扱うかをまとめます。「組版する」列にあるとおり、どれも別途インストールした処理系を呼び出して PDF を作ります。

エディタ対応 OSLaTeX の扱い
WinEdtWindowsTeX 専用フロントエンド。シェアウェア。TeX Live/MiKTeX と密に統合
WinShellWindows無料の TeX 用 IDE。構文強調・BibTeX 連携・処理系呼び出し
JetBrains IDE (IntelliJ IDEA ほか)Windows / macOS / LinuxTeXiFy IDEA プラグインで補完・PDF ビューア・BibTeX 対応
Notepad++Windows構文強調は標準。NppExec プラグインでビルドを実行
EmEditorWindows日本で人気。TeX 用色分け設定あり。外部コマンドでビルド(フリー版/有償版)
Sakura Editor / サクラエディタWindows無料・日本で人気。マクロから platex 等を呼んでビルド
Atom—(2022 年に開発終了・アーカイブ)歴史的存在。新規なら VS Code を推奨

どう選ぶか

Windows で TeX 専用の使い勝手をすぐ欲しいなら、無料の WinShell、あるいは有償でも作り込まれた WinEdt。ふだんの開発環境を活かしたいなら、JetBrains 派は TeXiFy IDEA、手元の Notepad++ で軽く済ませたいなら NppExec。日本語原稿を慣れたエディタで打ちたいなら EmEditorサクラエディタ に外部コマンドを仕込む、という具合です。

ただ、特に強い思い入れがなければ、無料・多機能・クロスプラットフォームで活発に開発されている VS Code(LaTeX Workshop) や、TeX 専用に作られた TeXstudio から始めるのが無難です。これらには専用ページがあるので、そちらも併せてご覧ください。